【インタビュー】藤田麻理絵さん

更新日:2021年12月21日


これは「#05 ナチュラルホルンの宇宙技芸 ホルンと弦楽のディヴェルティメント」に出演するホルン奏者の藤田麻理絵さんへのインタビューを再構成したものです。

(11月25日、すみだトリフォニーホール練習室1にて)


布施砂丘彦「みなさん、こんにちは。ミヒャエル・ハイドン・プロジェクト主宰の布施砂丘彦です。本日は、12月27日月曜日に仙川フィックスホールで開催される ミヒャエル・ハイドン・プロジェクト#05 ナチュラルホルンの宇宙技芸 ホルンと弦楽のディヴェルティメントにご出演いただく、ホルン奏者の藤田麻理絵さんにインタビューさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」


藤田麻理絵さん(以下、藤田)「お願いします。」



武蔵野音楽大学卒業。同大学卒業演奏会、読売新人演奏会に出演。
ナチュラルホルン奏者としてバッハ・コレギウム・ジャパンオーケストラ・リベラ・クラシカオルケストル・アヴァン=ギャルド他に参加。日本ホルン協会主催 第1回ホルンコンクール2位入賞。2015年〜2016年公益財団法人アフィニス文化財団の海外研修員としてバーゼル音楽院(スイス)に留学。現在、公益財団法人新日本フィルハーモニー交響楽団ホルン奏者。アレキサンダーホルンアンサンブルジャパン、ナチュラルホルンアンサンブル 東京、BRASS NEX各メンバー。

布施「さて、まずお聞きしたいのですが、現代のいわゆるモダンオーケストラや吹奏楽で使っているようなホルンと、いわゆるナチュラルホルンは何がどのように異なるのでしょうか。」

左からバロック時代、古典派の時代、現代のホルン


藤田「いちばん大きな違いは、キーがないこと、です。それから、現代のホルンと比べて、ナチュラルホルンのほうが若干小さく、軽いです。」

[豆知識①ヴァルヴ]
現代のホルンやトランペットにはキーで操るヴァルヴ(弁)が付いています。これは産業革命後、19世紀の前半に発明されたものです。ヴァルヴで空気の通路を切り替えることによって通路の長さを変えて(=管の全体の長さを変えて)、音の高さを変えています。ヴァルヴには、シリンダーをさげて通路を変えるピストン式と、ドラムを回転させて通路を変えるロータリー式のふたつがあり、現代のホルンはロータリー式を採用しています。ちなみにピストン式を発明したのはホルン奏者で、むかしはピストンのホルンもありました。

[豆知識②クルーク]インヴェンションホルンとも呼ばれる古典派の時代のナチュラルホルンは、楽曲の調によってクルーク(替え管)を差し替えることによって、管の長さを変えていました。

布施「ありがとうございます。ひとくちにナチュラルホルンといっても、バッハの時代に使われたホルンと、モーツァルトやハイドンの時代に使われたホルンは、仕組みやかたちが異なるのでしょうか。」


藤田「そうですね。わたしがいま手にしているのは、モーツァルトやベートーヴェンの時代に使われていたクラシカルタイプのナチュラルホルンですが、バロック時代のホルンにはチューニングスライドがありませんでした。」

[豆知識③チューニングスライド]
チューニングスライドと呼ばれるスライドを抜き差しすることによって、全体の長さを若干変えて、音の高さを変えることができます。つまり、このスライドを使うことによって、簡単にチューニングができるようになったのです。

藤田「それから、バロック時代のホルンは、古典派の楽器よりも、さらに小さいです。また、マウスピースの形もご覧のように異なります。バロック時代のホルンのマウスピースは、バロック・トランペットのそれと似ていますね。吹口の大きさや深さも異なります。」

クラシカルタイプのマウスピース(左)とバロックタイプのマウスピース(右)


布施「古典派の時代のホルンは、現代と同じよう右手にベルを入れていますが、バロック時代もそのように構えていたのでしょうか?」


藤田「いえ。バロック時代は、右手を使わずにこのように演奏していました。」

布施「では、右手をベルに入れるようになったのはいつからですか?」


藤田「1750年ごろ、アントン・ヨーゼフ・ハンペル(1710-1771)さんが見出しました。そこから、右手を使って、非倍音なども出すようになって、現代のホルンの構え方になりました。」

[豆知識④ハンペルとハンドストップ奏法]
ドレスデンの宮廷オーケストラで働いていたホルン奏者のハンペルは、楽器のベル(朝顔)に右手を差し入れて音程を調節するハンドストップ奏法を開発しました。このことによって、中音域でも音階を演奏することができるようになったほか、ベルに右手を入れることによって音色が柔らかくなりました。
ハンペルは楽器の開発にも尽力しました。それまでクルーク(替え管)はマウスピースと本体の間に挿入していましたが、これだとクルークによって奏者と楽器本体との距離が変わってしまいます。そこで、クルークを管の途中で差し替える方式を生み出して、この問題を解決したのです。
また、ハンペルはホルンの教師としても名を残しており、ベートーヴェンやモーツァルトとも交流があった名ホルン奏者ジョバンニ・プントも教えました。

布施「ありがとうございます。ナチュラルホルンと現代のホルンではどのような違いがあるか、実際に音を聴かせていただけないでしょうか。」


藤田「はい、では音階を演奏してみます。」


布施「ありがとうございました。最後に、何かコメントいただけますでしょうか。」


藤田「ミヒャエル・ハイドンとヨーゼフ・ハイドンはホルン協奏曲を残していて、また、当時の有名なホルン奏者だったヨーゼフ・ロイトゲープ(1732-1811)は、ヨーゼフ・ハイドンやミヒャエル・ハイドンのオーケストラにいました。当時有名だったロイトゲープと親交があったためと思いますが、ヨーゼフ・ハイドンの作品ではとにかく音域が高く、高度な技術が求められます。ミヒャエル・ハイドンのディヴェルティメントはヨーゼフ・ハイドンとは異なり、オーケストラの下吹き(2、4番奏者こと)のためのような跳躍の多い曲となっています。わたしにとってとてもチャレンジですが、この2曲の魅力をお伝えできればと思います。」


布施「今日はありがとうございました!」


藤田麻理絵さんも出演する、#05 ナチュラルホルンの宇宙技芸は、12月27日に開催いたします。ライブ配信もあります(アーカイブ配信はございません)。どうぞご利用ください。



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